望進法講座  第二回

あなたの体調れる  第二回

肝臓の働き

 陰陽五行によると、春は肝臓と胆嚢が活発に動く季節と言われています。

冬の間は弱々しかった太陽が勢いを増して陽気が多くなります。そうすると、冬の間じっと隠れていたく差や木の芽が、一斉に芽を出して活動的になります。

寒さという強い陰性の中でグッと実を縮めて陽性になっていた生き物は、春の陽性にふれると爆発的にのびるのです。この季節になると吹き出物が出たり、体がかゆくなったりという症状が出やすくなります。

冬の間、体を動かさないのに脂っこい物やタンパク質、甘い物やお酒等の糖分をとりすぎた分が陽気に引かれて排出されてくるのです。

一時は、良くなったかに見えたアトピーも、この時期になると一時的に悪化します。吹き出てくるわけですね。

 さて、冬の間、肝臓にため込んでいた毒素(老廃物)を体の外に出してくれる春先に食べる食べ物は何でしょう?それは、苦みです。山野草は多くこの苦みを持っています。

五行の図を見てみましょう。肝臓は木に属します。ここに溜まった毒素は、火のエネルギーに属す陰性の苦みを食べます。これは、つまり余分な物を捨てる働きがあります。反対に足りない物を補う「補正」の働きを持つ陽性の苦みもあるので注意しましょう。

代謝機能

 肝臓の代謝機能は三つあります。

その一つは糖代謝です。血液中のブドウ糖をグリコーゲンをブドウ糖に戻します。

二つ目の働きはタンパク質の代謝です。アミノ酸から血液タンパクを作ります。中医でも「肝は血を蔵す」と言い、肝臓は血液と深い関わりがあると言われています。

三つ目は、脂質の代謝です。脂肪の分解物の、脂肪酸などから、コレステロールとリン脂肪酸を合成します。

現代人の食事は甘い物やお酒などの糖分過剰、肉や卵、牛乳などの高タンパク、高脂肪食が普通になっていますから、皆さんが思っている以上に肝臓に負担をかけているのです。

この結果は数字に明らかに出ています。たとえば、肝臓ガン、胆管ガンの死亡数は1980年で9741人だったのが1999年に葉に2万3492人と激増しています。

すべて食事が原因とは言えませんが食生活の悪習慣がガンの原因と言われている昨今です。大きな原因であることは間違いあるません。

排泄解毒作用

肝臓の重要な働きにはもう一つ排泄と解毒作用があります。

働きを終えた赤血球はビリルビンに作り替えられて便や尿から排泄されます。また、口から入ってきた毒物や薬物も、肝臓で分解されて体外に排泄されます。

農薬や有害な食品添加物、空気や水の中の汚染物質も大きな問題です。

食品添加物だけを見ても、一年間に食べる量は3㌔とも5㌔とも言われています。少なく見積もっても10年で30㌔になるわけですから、70%切り取っても再生するという強い臓器の肝臓でも、何も影響がないとは言えないと思います。

 肝臓の不調の見分け方

 肝臓の不調が、GOT,GPTという肝機能を示す数字に出てきたときにはすでに病気になっているということが言えるでしょう。

もし肝臓が本当に悪くなる前に、自分で肝臓が悪いかどうか分かるのなら、病気になる前に予防も出来るわけですからとても有益ですね。これを「望診」と言います。

 さて、肝臓の働きが悪くなると次のような症状が出ます。短気になった・おなかが張る・手足がつる・生理不順・爪が割れる・憂鬱な気分・口が苦い・視力の低下・眼底出血・耳鳴り・肌が弱くなって日焼けや金属に負けるなど。

肝臓は病気になってもほとんど症状がありません。ですから自己診断が難しいのですが、前述したような症状が気になりだしたらライフスタイル、特に食生活を見直すことが大切です。

 顔に表れる症状

 油脂、特に動物性の脂が多いと、眉間から眉の上までがふくれやすくなります。

動物性の脂と言えば主に、肉や卵、チーズ、バター等ですが、マグロやカツオなどの赤身の魚も入ります。これらのものを毎日のように食べていると、眉間がふくらんで、縦シワが寄ってきます。

また毎日お酒や甘いものを食べたり飲んだりする、また強い薬物を摂っていると眉間が赤くなる場合があります。

あるいは、パンやケーキなどの焼いた小麦が多いと眉間からふけのように粉を吹きます。

次に肝臓の不調は眼に現れます。最近どうもまぶしい、目が疲れる、ショボショボする、風が吹くと涙が出やすい、肩こりが眼に来た、等という症状があれば、肝臓の症状がいまいち思わしくない事を表してます。

このようなときは肝臓だけでなく、脾臓と腎臓のケアをすると尚回復が早くなります。

このほか白目では次のようなことが分かります。

白目の部分が青っぽい・・・・陰性の物、たとえば熱帯の果物や甘い物などが多くリンパの不調、貧血を示しています。

白目が灰色に濁っている・・・・強い陰性の物が多く腫瘍に要注意の状態。

白目に赤い斑点が現れる・・・・陰性の飲食物の摂りすぎによる腎臓の不調、糖尿病。

白目の充血・・・・陰性の飲食物の摂りすぎによる不眠症、心臓循環器の機能不全。

 爪の色の変化と病気

 肝臓の不調とともに現れる各臓器の不調は爪に出ます。

 白・・・気血の不足、貧血、動脈梗塞

 黒・・・・腎臓機能障害、長期の慢性病の場合は危険な前兆、放射線治療や、長期にわたる薬物投与の後遺症。

 黄色・・・・黄疸、肝機能障害の始まり。

 赤・・・・発熱、熱症の病気がある。

 赤白まだらで外側は赤茶色・・・・脳梗塞、肝機能障害。

 青・・・・寒証の病気、肝臓病の兆候、長期にわたる病気の場合は危険段階、薬物中毒。

 爪の形状の変化と病気

 小爪(三日月)と平行に二本白い横線・・・・腎炎、腎臓機能の低下、低タンパク症。

 不規則な白い線が縦横に表れる・・・・肝硬変、栄養不良、心筋梗塞、気血虚弱。

 黒(灰色)の縦線・・・・腎機能低下、放射線治療または薬物治療の後遺症。

 先端が茶色っぽく中心部が透明・・・・肝硬変、肝機能障害。

 爪が横方向に反っている・・・・虚血などの肝臓異常。

 爪が内側に曲がっている・・・・慢性の炎症、関節炎、甲状腺機能減退、末梢血管障害。

 爪が薄くなる・・・・陰性過剰、気血虚弱、ビタミン不足。

 爪が割れやすくなる・・・・陰性過剰、内分泌低下、肝機能障害。

 白い斑点がでる・・・・砂糖や果物など甘い物の過剰。
 
                          山本慎一郎
  
   PROFILE
 やまむら・しんいちろう
 1949年、岩手県盛岡市生まれ。77年に岩手県雫石町で自然食品店「いーは・とーぶ」を始める。80年に盛岡市に移転し、マクロビオティックの普及に専念。99年渡米しクシインスティチュートMCTを卒業。帰国後、盛岡市の大沢神経内科においてゴーシュ研究所を設立。盛岡を拠点に全国各地で食事指導のほか、講演会、勉強会などを中心に活動。

 日本CI協会より、月刊誌「マクロビオティック」の転載許可をいただき掲載しております。