望診法講座 

あなたの体調れる

 私たちは、ほとんど生きているという実感がないまま毎日を過ごしています。
 
 夜が明ければ必ず朝がくる、冬が終われば必ず春が来て花が咲く。これが当たり前のことで、疑いを持つ人なんて誰もいませんね。普通の状態であれば、昨日はちゃんと来たけど、明日は朝が来ないんじゃないか?とか、今年は春が来なくて、ずっと冬のままじゃないか?なんて疑いを持つことなんか無いわけです。

 夜が明ければ朝になる、冬が終われば春になることを信じきって、頼りきって生きているわけですよね。自然に全面的に頼ることによって生きているわけです。

 生きていると言うことをいつもいつも実感していたらたまりません。毎日死と隣り合わせであることは通常の状態ではありませんから、無意識なのは当たり前なのです。

 今の日本においては、幸せなことに飢餓で死ぬことも戦争で死ぬこともまずありませんから、自分の死を間近に考える機会は限られます。もしあるとすれば事故や重い病気になったときぐらいでしょう。

 さて、こうして無意識のうちに生きている私たちでありますが、生きている意識がなくても腹が減ってきます。命をつなぐために何かを食べなければなりませんからね。自分の労働や活動に見合っただけのエネルギーを、毎日補充する必要があるわけです。

 
 何をどれだけ食べるか

 スーパーや食料品に行くと、たくさんの種類の食べ物が所狭しと並べられています。どの商品も「買って、買って」と言っているようです。ここには季節も国境もありません。春夏秋冬の野菜や果物が並び、世界中から集められた食材があります。
 
 だからキャベツが足りなくて買いに行ったのに、あれこれと余分な物まで買ってきたりします。「なんかね、一個だけじゃかっこわるいし。」

 またお腹がすいているときやストレスがたまっているときに行くと、ついつい買いすぎてしまうこともよくあります。そんなことで「あー買いすぎた!」・「食べ過ぎた!」となるわけです。私たちは何をどれくらい食べればいいのでしょう。

 一日の基礎代謝は1200㌔カロリーといわれます。この数字は、年齢や身体を動かす量、体重などによっても差がありますから、一概に言うことは出来ませんが、生きていくためには最低これぐらいのカロリーが必要と言われてます。

 でも、健康に生きていくことを考えれば、熱量だけで判断することは出来ません。
 
 たとえば朝食をごはんにするか、パンにするかで体温の上昇する時間がずいぶん違ってきます。ごはんの方が早く上がると言われています。また、食後のお茶を煎茶にするのかコーヒーにするのかでも違ってきます。
 
 生後1~2歳の小さい子なら、食べたり飲んだりした結果が比較的早く出てきますが、大人になるとお茶を飲んでもコーヒーを飲んでも大して変わらないような気がします。
 
 和食を食べても中華を食べても、その差が歴然と現れてきた!なんて言うことはまれなんですね。どうしてかというと、身体の中で酵素やビタミン・ミネラルを使って内蔵がうまく処理してくれているからです。無意識のうちに身体がフォローしてくれているわけです。
 
 でも、こうした無秩序な食生活を続けていくと、使い切れなかった栄養素が脂肪などとして身体に蓄積し、やがて病気へと進展していきます。

 一杯のコーヒー、一切れのパンが微妙に血液の質を変えます。血液の質が変わることで、おのずと脳や神経系、細胞が変化します。細胞の変化は組織を変え、内臓の不調へと進んでいきます。
 
 これらの変化は、肉体的、精神的機能を毎日少しずつ変え、私たちの意識や行動に影響します。こうして私たちの考え方、つまり知的判断、社会的意識は、「毎日の食べ物」によって変化していくのです。

 食べることは「外と内の環境の調和」

 春には春の、夏には夏の食べ物を食べる。あるいはその土地で出来るものを食べると言うことは、外の環境を取り込むことでもあります。たとえば春に出来るものを食べることによって、体は春の環境になじみます。

 ところが、前述したようにお店では、春夏秋冬の野菜や果物が季節に関係なく置いてありますから、もし何も考えもなしに、あるいは彩りや栄養だけを考えて、冬に夏の物を常時使えば、体の中は夏の環境に変化してきます。冷えてくるわけですね。
 
 同様に、脂肪たっぷりのマグロや、肉類、あるいは中華料理やイタリア料理を連日食べていると、体の中に処理できない栄養素がたくさん残ってしまいます。人は環境の生き物であることを忘れてしまうと、病気への第一歩を踏み出すことになります。

 病気の兆候は体に表れる

 こうして毎日少しずつ体に蓄積した物は、まず第一番として疲労感として現れます。

 次に痛みとコリとして現れます。肩こりや足腰の関節痛、頭痛、発熱として出てきますが、実はこれも排出、いらないものを外に出してしまおうと言うことなのです。

 このような兆候があっても食事を改めることなく、さらに進むと、血液の状態が悪くなってきます。血液の状態が悪くなってくると細胞や組織が影響を受け、高・低血圧、紫斑がでやすいとか、ヘルペス・やアレルギーなどといった皮膚病が出てきます。こうして次に内臓へと進行していきます。

 出ているサインによっていろいろなことが分かる

 シミやそばかす、あるいはアトピー性皮膚炎は無秩序に出ているようですが、実は出ている場所と対応した臓器に対応しています。もっとも外側(陰)は体の深部(陽)にある内臓に対応しています。

 全体は部分に現れ、部分は全体を表す、という原則があります。顔や胴体、手や足も同じです。その部分に現れる兆候を知ることによって、体のどこの部分が、何を食べ過ぎたか事によって不調になっているかが一目瞭然に分かるのです。

 望診の基本は陰陽と陰陽五行

 マクロビオティックでは食べ物をはじめ、あらゆる現象を陰と陽で見ます。

 とても役に立つ望診ですが、これを学ぶためにもは、陰陽の見方を知っていることが必要です。

 でも、望診を学ぶことによって、よく分からなかった陰陽が分かるようになった方もいますから心配はいりません。

 たとえば油物をたくさん食べたこととしましょう。油は上昇と広がる性質をもっています。ですから、まず第一番に皮膚に出やすい。次に、顔では額に出やすい性質があります。

 体で考えればへそから上、あるいは、脇や腕の折れ目、陰部といった陰に隠れるところに出やすい特性があります。

 体の前後で言えば、一般的に植物性の油は前側、動物性の脂は背中に出やすい傾向があります。

 反対に収縮した形のもの、たとえば大豆は顔の前側の下側、つまりアゴに出やすく、卵は動物性の中でもっとも凝縮した陽性ですから、尻に出やすい特徴があります。

 シミや紫斑、ホクロなど体には様々なできものが出来ます。ホクロなどは生まれつきという場合もありますが、顔や肩がシミだらけの赤ちゃんなんていないとおもいますから、どちらかというと遺伝的な体質を基本に、成長期の食べ物、現在の食べ物が大きく影響していることが分かります。

 このときのシミやそばかすが出る場所と色が大きな手がかりとなります。

 これは陰陽五行を応用すれば簡単に分かります。たとえば、ニキビがあごに出たとします。アゴの位置は顔の下にあります。ですから何か陽性が多すぎることが予想できます。

 膀胱経では、同時に生殖器を表しているので、陽性なエネルギーが生殖器にたまっているわけです。その色が赤であれば、夏の物、熱帯の物の過剰も同時にあります。

 陰陽五行では、火は夏(熱帯)で赤を示しているからです。

 夏の物、熱帯の物で何が多いかを考えると、一番多い原因としては「砂糖」です。

 大豆の加工食品や、卵、チーズ、バターのような食品と、甘い物によってそのような吹き出物が出来ます。これは顔だけでなく、体の様々な場所に出ます。

 「あんた、食べ過ぎだよ!このまま行くと子宮や卵巣の病気になるよ!」と体が教えてくれているわけです。

 これから5回に分けて望診の基本をお話していきます。

                         山本慎一郎
  
   PROFILE
 やまむら・しんいちろう
 1949年、岩手県盛岡市生まれ。77年に岩手県雫石町で自然食品店「いーは・とーぶ」を始める。80年に盛岡市に移転し、マクロビオティックの普及に専念。99年渡米しクシインスティチュートMCTを卒業。帰国後、盛岡市の大沢神経内科においてゴーシュ研究所を設立。盛岡を拠点に全国各地で食事指導のほか、講演会、勉強会などを中心に活動。

 日本CI協会より、月刊誌「マクロビオティック」の転載許可をいただき掲載しております。